整形外科では、首から下の骨、関節、筋肉、脊椎などの運動器を対象とし、診断から治療まで幅広く診療を行っています。
整形外科
診療内容・特色
地域医療機能推進機構(JCHO)さいたま北部医療センター整形外科では高齢者の運動機能改善のための医療を提供します。特に日常生活に支障をきたす、“膝の痛み”や“股関節の痛み”に対する積極的な治療と骨粗鬆症による骨折の予防が中心になります。
「膝が痛くて病院を受診したら膝が変形しているから手術しなくては歩けなくなると言われた」という話を耳にすることがあります。そういう経験をした患者さんも少なくないことでしょう。確かに、自由に旅行やショッピングに出かけることは難しくなるかもしれませんが、膝の変形が酷くなって全く歩けなくなるということは滅多にあることではありません。
手術を受けるのは怖いことで、できれば手術をせずに治したいとは誰でも思うことでしょう。最近は膝関節の中に幹細胞や多血小板血漿(PRP)を注入する治療に期待が集まりがちですが、はたしてそのような治療で変形が治り元通りの膝になるのでしょうか。インターネットではあまたの医療施設のホームページが検索されますが、患者さんの満足度はあまり見かけません。確かに幹細胞やPRPに組織修復能力がありますが、怪我ならまだしも、加齢とともに徐々に進行した膝の変形を、一朝一夕に元通りにすることは難しいように思います。顔や髪の毛は幹細胞移植やPRPで若さを取り戻せるでしょうか。ましてや構造の複雑な膝関節です。実際に、やってみたけどうまくいかなかった、といって手術を受けにいらっしゃる方もいらっしゃいます。つまり、保存的治療をおこなっても期待するほどの後顆がなく、自分がやりたいことができないときには、手術するしかないのはないでしょうか。
変形性膝関節症に対する手術としては、骨切り術、単顆膝関節置換術(関節の内側もしくは外側だけを置換する手術; UKA)、人工膝関節全置換術(関節全体を置換する手術; TKA)があります。骨切り術とは、O脚の患者さんであれば、体重が痛みのない膝の外側にかかるように下肢(脚)の形を変える手術です。軟骨の修復を同時におこなうこともあります。自分の関節がそのまま残ることが最大の利点ですが、どのような患者さんに対しても施行できるわけではありません。また、術後10年間に人工関節になる確率は40%という報告もあり、”人工関節までの時間稼ぎ”としておこなわれることもあります。
人工関節置換術には単顆膝関節置換術と全置換術があります。内側だけが傷んでいる場合は単顆置換術がおこなわれることもあります。全置換術よりも侵襲が少なく回復が早いことが利点ですが、人工関節が緩むことが全置換術よりも多い印象があります。人工関節が緩んだ場合は入れ替えが必要になります。一方、全置換術はこの3つの手術の中では、もっとも長期成績の安定した手術です。ただし、単顆置換術に比べると侵襲が大きくなります。体内でもっとも大きな関節の置換ですから、術後は傷自体の痛みも少なくありませんがいずれ癒えます。また、歩行時の痛みも術前とは異なり、日ごとに改善します。
当院では、この地域では初めてコンピューターアシスト(ナビゲーションシステム)を用いた手術を取り入れました。その利点は、術者の設計通りに正確に人工関節を設置することができることです。つまり、変形が進行する以前の患者さん本来の脚の形をコンピューターの補助により正確に再現することにより、より機能的な関節を形成することができるのです。ちなみに、術者は2013年からこの手術法を埼玉医科大学に取り入れ、2021年の日本人工関節学会では従来法より優れた成績であることを報告しています。また、傷が小さいにも関わらず(平均9.5 cm)、適切に人工関節を設置することが評価され、全国の整形外科医を対象とした安全な人工関節手術の指導者に任命されています。
人工股関節全置換術(THA)は非常に満足度の高い手術です。痛みの改善が明らかなことがもっとも大きな理由の一つです。それは、膝と異なり関節が大きくないことと、膝のように表面にはなく深くにあるので、ある程度時間がたつと動きによって表面的な痛みが生じないことが理由だと考えています。しかし、その反面歩行に必要な臀部周囲の筋肉に囲まれていますから、術後に、できるだけ早く患者さんを回復させるためには、これらの筋肉をできるだけ傷つけないことが大事です。
一方、正常な股関節と違い、人工股関節には骨盤の骨と大腿骨をつなぐ太い靭帯がありませんから、1%程度に脱臼がおこる危険性があるといわれています。しかし、後方(背側)への脱臼が一般的なことから、当院の人工股関節全置換術では、脱臼を防止するための壁となる後方の関節包を傷付けないよう、股関節の前方(腹側)から手術をおこなっています。しかし、ここでもう問題が生じます。歩行においてももっとも重要で、股関節の腹側を覆っている中殿筋を傷つけないようにしなければいけません。この手術はかなり高度の技術を要しますが、当院ではそれをおこなっています。当院の人工股関節全置換術は1~2週間で日常生活に戻ることを目指しています。
一言で整形外科といっても、脊椎、肩、手、足と言ったように部位によって専門が分かれています。当院では木曜日の午前・午後(平沼浩一、伊藤賢太郎)と金曜日の午前(東島啓仁)のみを一般外来とし、地域の方々に専門性の高い医療を提供するため、常勤医ではありませんが、月曜日の午前・午後と金曜日の午後に肩関節を専門とする坂口勝信と関端浩士、水曜日に手の疾患・外傷の診療を専門とする寺山恭史と腰痛や腰部脊柱管狭窄症、脊椎疾患を専門とする飯塚秀樹を配しています。
手術に限らず、治療を受ける際にもっとも重要なことは、患者さんが担当の医師を信用できるかどうかです。信頼関係がなければ、医師がいくら素晴らしい治療を提供したところで、患者さんの納得をえられないこともあります。また、相性も人それぞれですから、他人の噂を鵜呑みにできるものでもありません。
運動機能の異常を感じられたら当院整形外科を受診してみてください。
医師紹介
医師名 | 専門科 | 一言コメント |
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資格 | ||
【診療部長】 伊澤 直広 (いざわ なおひろ) (東京大学卒) |
整形外科 | 地域の皆さまが安心して医療を受けられる環境を整えることを目指し、何かあったときには頼りにしていただける存在でありたいと考えています。近隣医療機関との連携を密にし、患者さんが負担なく受診できるよう努めてまいります。 |
医学博士、日本整形外科学会専門医・指導医、日本リウマチ学会専門医・指導医、日本人工関節学会認定医、日本骨粗鬆症学会認定医、日本リウマチ財団登録医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター | ||
伊藤 竜臣 (いとう たつおみ) (埼玉医科大学卒) |
整形外科 | 痛みの軽減と共にその根本からの改善を目指していきましょう。 |
整形外科専門医 |
氏名(あいうえお順) | 専門外来 |
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飯塚 秀樹 | 非常勤医師 脊椎・腰痛・狭窄症 |
坂口 勝信 | 非常勤医師 肩 |
正田 健太 | 非常勤医師 整形外科一般 |
関端 浩士 | 非常勤医師 スポーツ |
田中 伸哉 | 非常勤医師 整形外科一般 |
寺山 恭史 | 非常勤医師 手 |
平沼 浩一 | 非常勤医師 整形外科一般、救急、外来 |